昨夜は紀尾井ホールの十二音会の演奏会に伺ってきました。
王昭君の只拍子残楽や舞楽の陵王一具など、非常に意欲的なプログラムでした。
特に第２部の陵王一具は長大な曲でしたから、演奏される方も舞をされる方も本当に大変だったと思います。
客席も食い入るように舞台上に集中していたのですが、そんな時にまたしても邪魔が入りました。
舞人と笛、打楽器による乱序が始まって、だいぶ経った頃でしょうか、
笛の音が止んでいるにも関わらず、どこからか笛の音色が聞こえるではありませんか！
それも先ほどまで舞台上で笛が吹いていたものが。。。明らかに機械から流れ出てきている音とわかりました。
録音機です。
すぐには音がやまなかったので、もしかすると当のご本人には聞こえていない、または気づいていなかったのかもしれません。
音が流れだした原因が操作を誤ってしまったのか、機械に思わず触れてしまったのか、機械が壊れたのか、ですがそんなことは関係ありません。
そもそもこうしたホール内、公演での録音はもちろん厳禁というのが規則ですし、演奏者への礼儀です。
三田先生方が私の席の真向かいにいましたが、そちらでもはっきり（むしろそちら側の方がはっきりと）聞こえたそうです。
となればもちろん、もちろん舞台上にもその音は聞こえていたことでしょう。
笛の主管をしておいででした安斎先生も、その音をかき消すように演奏を始められたように見えました。
何たることでしょうか！
そもそも録音自体が禁止です！
集中が非常に高まっていた演目の最中、その集中を遮ることは一番してはいけないことです。
以前もこちらで国立劇場での観劇について書きましたが、非常に残念なことでした。
クラッシクコンサートではここ数年、「のだめ」の影響によりクラッシク初心者がコンサートホールに足を運ぶ機会が非常に増えたそうですが、その結果常連客との摩擦がおこり問題となっているといいます。
初心者またはそうと思われる人のちょっとした行動を捉えて、常連客が過剰なまでの抗議をしてそれがトラブルとなっているそうなのです。
その記事には、「一方的かつ理不尽にキレる常連客」というかたちで取り上げられ、主催者も対応に苦慮しているとなっていましたが、昨日のような出来事を目の当たりにすると、今後観客どうしのトラブルも増えることも必須ではないかと思われました。
初心者や普段劇場に足を運ばない人にとっては、「ほんのささいな」、「たった一度」と考えるのかもしれませんし、ひどい場合には周りに迷惑をかけ、不快にさせていることにすら気づいていないのかもしれません。
しかし足繁くホールに通う常連客からは、それは日常的に繰り返される「極めて不快な」思いなのです。
そしてそれは舞台上の演奏家にとっても同じ思いなのかもしれません。
昨日舞台上にいらした演者の方々は誰よりも「キレ」たかったのではないでしょうか。
観客は決して一人だけで鑑賞しているわけではないことを忘れてはいけないのです。
