雅楽とは何をさすのか。
雅楽の楽器を用いた音楽=雅楽であるのか？
または
伝承されてきた雅楽古典曲を演奏していれば、それは雅楽といえるのか？
はたまた
雅楽の楽器を使って童謡やポップス、洋楽曲を演奏したら雅楽なのか、または雅楽ではないのか？？？？
・・・・・
10年ほど前、ある博物館の学芸員さんより演奏の打診を受けました。
「笛の音いろいろ」
現在一般に演奏される横笛を一同に集め、比較をするという企画でした。
フルート、能管、篠笛、龍笛と横笛吹きばかりを集めてステージで演奏をする。
この学芸員さんの素晴らしい点は、決してコラボレーションをさせたり、また演奏を方法を指定せず、すべてを演奏者に任せたことです。
そしてただ
「それぞれの楽器の独自性を際立たせる比較をしたい」
という企画意図のみを演奏家ひとりひとりに託したのです。
具体的に公演の中身として要望を受けたのが、�，修譴召譴粒擺錣遼寨茲留藾奸↓◆峭咯襪侶遏廚離愁躅藾佞鬚垢襪箸い�2点でした。
�，藁凝�としてはやはり雅楽合奏ということで笙、篳篥を伴った古典曲の演奏をさせていただきました。
そして�◆�
じつはこれが私にとって初めての、古典曲以外の演奏。
もちろん龍笛用の譜面などないので、自分で笛の音を拾いながら、譜面に起こしていく作業をしました。
さらに、三田主席のアドバイスを頂戴しながら、雅楽古典曲の拍子や間を参考にして、息継ぎのさせ方や間の取り方、全体の曲の進行を作り上げて行ったのです。
また龍笛の手付の特徴などもやはり反映させました。
そうして迎えた当日、一方の能管の奏者の方も、能管の演奏法に則った「荒城の月」を、見事に演奏され、一見すると同じに見える龍笛とのコントラストが実によく出た比較演奏となったのです。
演奏時には三田主席より
「いつもの古典曲を吹いているのと同じように、龍笛の曲として龍笛らしく、雅楽らしく演奏して遊んでこい」
と舞台袖から送り出された記憶があります。
雅楽古典曲の素晴らしさと無限の可能性に気づかせてくれ、雅楽の楽しさを味わわせてくれたこの企画には今でも本当に感謝しています。
（当時、企画をした学芸員さんには演奏会にも足を運んでいただいたりと、交流をさせていただいています）
それ以降、もっともっと雅楽古典を勉強し、たくさんの人に知ってもらいたいとも思うようになりました。
そしてこのような経験から、
「雅楽の楽器を使って童謡やポップス、洋楽曲を演奏したら雅楽なのか、または雅楽ではないのか？」という点については、
単にそれらの音楽のメロディをなぞってみたり、そちらの音楽スタイルに迎合せず、雅楽古典に基づいた演奏方法をしっかり取り入れた演奏ができれば、雅楽としての演奏は不可能ではないと思っています。
しかし例えそうであったとしても、雅楽の楽器が最も輝けるのは、やはり古典曲の演奏によってであるとも思っています。
では、最後にもう１つ。
これはどうでしょうか？
雅楽の楽器を使い、古典曲を演奏しているにもかかわらず、その演奏理論が雅楽古典本来のものではなくなってしまっていたら、それは雅楽と言えるのか？？
この問題は現在の雅楽にも大きな影を落としていると、残念ながら言わざるを得ません。
過去数回にわたり参加したソウルの国際ダンスコンペティションでは、バレエのステップやターンなどを次々と繰り出して、完全にバレエまたはコンテンポラリーダンスをしているにも関わらず、｢古典舞踊｣を主張して譲らない中韓の舞踊家を何人も目の当たりにしてきました。
「彼らの古典舞踊家たる由縁、そして誇りはどこにあるのだろうか？またはどこに消えてしまったのだろうか？」
実に虚しいものでした。
雅楽が決して同じ状況になってはならないのです。
古典がつまらなく感じ、別の表現に優位性を見るのならば、古典からそちらの世界に移ればいいのです。
しかし彼らはなぜバレエなどを専攻せずに、依然として古典の世界にとどまり続けているのか？
それは競争率ではないでしょうか？
世界中の舞踊家を相手に生き残るのか、国内のみで戦うか。
その競争相手の数も、比較にならないほど違う。
案外簡単な理由なのかもしれません。
彼らにとって、古典の世界に居続けることは、生き残るための選択に過ぎないのかもしれませんが、そのために古典の世界が歪められてしまうというのは、実にひどい話だと思います。
