今日、５月２１日は「世界文化多様性デー」だそうです。

これは２００２年に国連が定めた記念日です。

「繁栄や持続可能な開発、平和的共存を実現する手段としての文化の潜在的能力を高める必要」から宣言されたそうです。

「文化の潜在的能力」

しかし、今日の日本において残念ながらその力をよく知っているのは実際は文化の継承者や、その文化を目の当たりにし、その力の重要性を知った人たちだけなのではないでしょうか。

文化を継承することは容易なことではありません。

雅楽でいえば、たとえば

龍笛を始めたとすると、まずは音を出すことにすべての力を注ぎます。

「何で自分は音がでないんだろう」

「自分は一生音が出せないままなのではないか」

こうした不安でいっぱいになるものです。

そして音が出るようになると今度は

「なんで、こんなに息が続かないのだろう」

とまた不安になります。

さらに歩を進めていっても

「どうして先生のようにうまく吹けないのだろう」

「先生と吹くとうまくふけるのに、一人吹くとうまくできないのだろう」。。。。。。

こんな風に、不安や悩みが尽きることはありません。
だからこそ、私たちはこの不安や悩みを振り払うために稽古をするのです。自分と戦うのです。

嫌になったのならその時点で投げ出しているでしょう。

自分の技術の稚拙さを恨めしく思い涙を流したり、
自分が周りの演奏者に迷惑をかけているのではないかと申し訳なく思い、涙を流すこともあります。

でもそれは、だれかにいじめられたからでも、やめたくなったからでもなく、自分との戦いの過程で自分に対して流した涙であるはずです。


これは文化や芸術に限ったことではありませんが、「涙を流す」ということは＝「悲しい」だけでは決してないのです。

高みを目指して日々研鑽を重ねる仲間同士であるなら、なぜ仲間が涙を流しているのかは理由を聞かなくとも当たり前にわかること。

こうした自己との葛藤の中で「真の技」や「その芸術に対する思い」が育つことをわかっているからです。


そうしたなかで伝承されていく文化芸術には大きな力がある。
決して楽しいばかりではない稽古を経てもその文化芸術に魅せられる。その魅力こそがまた多くの人々の心を動かすことができるのでしょう。


まだまだ不安定な世界情勢が今日も報じられています。
同じ民族が対立し殺しあう現状。

決して他人事ではなく、私たちのの伝承する雅楽ともゆかりの深い地域でもありますね。
かつては同じ音楽や舞踊を楽しんだ人々であったはず。
今日の日本雅楽にはそうした頃の「記憶」がしっかり受け継がれているのです。。。。


文化・芸術の持つ力の意義を再確認するとともに、私たちの果たす役割の重要性をさらに痛感しているこの頃です。

アジアの国々との雅楽交流がいつか必ずアジアの人々の心に絆を呼び戻す日を信じて。。。
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